はじまり
ボヘミアの谷で打たれた大きな銀貨は「ターラー」と呼ばれた
ニューヨークの名物、ウォール街。その名はオランダ人が築いた防壁に由来します。私たちが使うドルの名もまた、オランダの言葉を経て、海を渡ってきました。
3分でわかる ドルという名前の旅
横に送って見られます
はじまり
ボヘミアの谷で打たれた大きな銀貨は「ターラー」と呼ばれた
旅の途中
名前は国ごとに変わる。低地では「ダールデル」になった
英語の口では「ダラー」
1575年〜
低地の共和国は、獅子を刻んだ銀貨を打ち始めた
ライオンダールデル。世界の貿易の銀貨に
その後
獅子の銀貨は海を渡り、ニューアムステルダムへ
のちのニューヨーク。ウォール街の名も防壁から
独立より前
北米の人は、スペインの銀貨も「スペインドル」と呼んだ
1792年
合衆国はスペインの銀貨を測って、自分のドルを決めた
あなたは1792年の合衆国で、新しいドルの重さを決める係です。手本にするのは、どちらの銀貨ですか?
選んでみてください
名前を運んだのは獅子の銀貨でした。でも、手本にはなりませんでした。
実際の手本はこちらでした。人々が「スペインドル」と呼んだ8レアル銀貨を測って、合衆国のドルは定められました。
獅子の銀貨は名を運び、スペインの銀貨が物差しになりました。

ニューヨークは、もとはニューアムステルダムでした。金融の中心地であるウォール街の名も、オランダ人が築いた防壁の跡に由来します。そして私たちが使う「ドル」という言葉もまた、オランダの遺産の一つです。
この言葉の源を辿ると、ヨーロッパの真ん中、ボヘミアの谷に行き着きます。その谷で打たれた大型銀貨は、谷の名にちなんで「ターラー」と呼ばれていました。
ターラーという名は、国から国へと旅をするうちに、その土地の言葉に変わっていきました。低地の言葉では「ダールデル」になり、英語の口では「ダラー」になります。英語の記録では、千五百五十年ごろにダーレルの形が現れ、千六百年ごろにダラーに変わります。
言葉は、ただ形を変えただけではありません。低地に生まれた反乱の共和国は、千五百七十五年から、獅子を刻んだ自前の「ライオンダールデル」を打ち始めます。この銀貨は世界の貿易銀となって海を渡りました。低地は、よその言葉を自前の銀貨として実体化し、世界へ送り出した中継の基地だったのです。
低地の人々が築いた街、ニューアムステルダム。のちのニューヨークです。この街を経て、北米の人々は獅子を刻んだ銀貨を「ダラー」と呼ぶようになりました。
やがて、大型の銀貨を指すこの言葉は、より広く流通していた別の銀貨にも使われるようになります。スペインの八レアル銀貨です。人々はこれを「スペインドル」と呼びました。まだ合衆国は影も形もありません。しかし、独立より先に、この国の貨幣の名は、もう決まっていたのです。
合衆国が自国の通貨を定めたのは、千七百九十二年のことでした。そのとき手本になったのは、ライオン・ダラーではなく、人々が「スペインドル」と呼んでいたスペインの八レアル銀貨です。この銀貨の実測に基づいて、合衆国のドルは定められました。
ボヘミアの谷で生まれたターラーという名は、オランダの獅子の銀貨によって新大陸へ運ばれました。そして、その名はスペインの銀貨に受け継がれ、やがて国の通貨単位の基準となったのです。獅子の銀貨は名を運び、スペインの銀貨が物差しになりました。
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